次期リーダー育成と技術者向けセミナーから見えてきたこと
この夏、対象と目的の異なる二つのAI研修・講演に関わりました。
一つは、ある製造業の企業で進めている次期リーダー向けの実践研修です。現場の声から経営課題を整理し、生成AIを活用しながら改善策とアクションプランを検討しています。
もう一つは、技術者・専門家を対象にした「生成AIとの協業」をテーマとする講演です。私自身が複数のAIとチームを組み、Webシステムを開発した実体験を紹介しました。
対象も形式も異なる二つの取り組みですが、そこには一つの共通点がありました。
AI活用の成否を分けるのは、プロンプトの巧拙だけではなく、仕事の任せ方と人間の判断であるということです。
なぜ、AIの操作を覚えても現場が変わらないのか?
「ChatGPTの便利なプロンプト〇選」「生成AIによる業務効率化テクニック」――。
世の中にはAIの操作方法やテクニックに関する情報が溢れています。しかし、AI活用を検討する際、次のような壁に直面する企業は少なくありません。
「プロンプトの書き方は学んだが、実際の業務や経営成果にどうつなげればいいのか分からない」
「全社にAIツールを導入したが、メールの要約やちょっとした検索で止まっている」
AIの操作方法を覚えることと、それを実際の仕事や組織の課題解決に組み込むことの間には、大きな壁が存在します。
1. 次期リーダー研修:AIを経営課題の検討プロセスに組み込む
現在、ある製造業の企業で進めている次期リーダー研修では、単なるAIの操作方法を学ぶことを目的にはしていません。受講者である次期リーダーたちが取り組んでいるのは、自社のリアルな現場課題の解決です。
- 社内ヒアリングで集めた現場の声を材料にする(表面的な不満ではなく、真の課題を探る)
- AIを、情報整理・真因分析・アイデア発想・企画検証の壁打ち相手として活用する
- 検討した解決策を、自分たちの言葉で構造化し、経営層へ改善提案する
ここで重要なのは、「AIに経営課題の答えを決めてもらう研修ではない」ということです。
自社の状況や現場の事実を十分に与えず、「我が社の課題と解決策を教えて」と尋ねるだけでは、回答も一般論にとどまりがちです。そうではなく、現場の事実を人間が与え、「この現象の裏にはどのような構造的課題があるか?」「この対策の実行上のリスクを検証して」と対話を重ねます。
AIとの対話を通じて、次期リーダー自身が課題を構造化し、解決策を考え、実行可能な提案へと落とし込んでいく。AIは答えを出す道具ではなく、人間の思考を深めるための「ともに考える相棒」として機能しています。
2. 技術者向けセミナー:AIを「チームメンバー」として扱う
一方、技術者・専門家向けのセミナーでは、私自身が「人間1名+複数のAI(Gemini、ChatGPT、Antigravity)」というチームを組み、実際のシステムを開発した舞台裏をお話ししました。
- Gemini(発想型):アイデア出し、壁打ち、概念の広がりを担当
- ChatGPT(論理型):情報の整理、ロジックチェック、客観的なレビューを担当
- Antigravity(実装型):技術調査、実装、動作確認を担当
- 人間(宮川):目的設定、役割分担、評価、一時停止の判断、最終責任を担当
それぞれのAIに異なる「役割」と「評価軸」を与え、必要に応じて、あるAIの出力を別のAIにレビューさせながら開発を進めました。
参加者からは、「AIへの仕事の任せ方は、人間に対する仕事の任せ方とよく似ていますね」という感想や、「これまで受けたAIセミナーの中で、初めて眠くならなかった」という、講師として非常にうれしいお声もいただきました。
AIを単なる検索ツールとして扱うのではなく、役割を与えてチームとして動かすことで、人間のチームマネジメントにも通じる考え方が見えてきます。
3. AI活用とリーダーシップの共通点
AIを「相棒」や「チームメンバー」として扱うとは、AIを擬人化して無条件に信用することではありません。むしろ逆です。
今回の2つの取り組みから見えてきた「AI活用とリーダーシップ(マネジメント)の共通点」は以下の通りです。
- 相手の特徴と得意・不得意を把握する
- 目的と役割、期待する成果を明確に伝える(曖昧な丸投げをしない)
- 出てきた成果物を鵜呑みにせず、事実や一次情報と照合する
- 流暢な誤りや前提のズレが見られたら、必要に応じて作業を止める
- 最終的な採用・不採用の判断と責任は、人間が負う
AIは圧倒的なスピードで作業をこなしますが、時に自信満々に間違った情報(ドヤ顔での誤り)を出力します。見た目の完成度に騙されず、一次情報と照合して評価し、前提条件や一次情報を確認できない場合には、作業をいったん止めるという決断を下す。
これは、次期リーダーがチームへ仕事を任せ、成果を確認し、プロジェクトのリスクを管理する際にも通じる考え方です。
AIとの協業プロセスは、自分の指示の曖昧さや判断基準を見直す機会にもなります。結果として、リーダーシップやマネジメントを考える実践的な題材になり得ます。
結論:AI研修を「プロンプト講座」で終わらせないために
生成AIの操作方法やプロンプトの型を学ぶこと自体は否定しません。しかし、それだけでは、現場の業務改善や経営成果へ結びつけることは容易ではありません。
今、企業に求められているのは、「自社の課題を題材に、仕事のプロセスのどこにAIを組み込み、何を任せ、どこを人間が判断するのか」を設計できる人材の育成です。
ITグローアップでは、単なるツールのレクチャーではなく、以下のような実践的なテーマを通じて、組織と人材の変革を支援しています。
- 次期リーダー育成とAI活用(自社課題の構造化と経営提案)
- 経営課題・業務課題の構造化とAIの組み込み
- 人間とAIの役割分担・プロセス再設計
- AIガバナンスと品質管理・ファクトチェック
- AIを活用したプロジェクトマネジメント
「AIを使う人材」から、「AIと協業して成果を生み出す人材」へ。
自社のAI活用やリーダー育成を次のステージへ進めたいとお考えの経営者様・人事担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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- 代表:宮川 竜治(技術士)
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